エピローグ:永遠の命 お空の上の世界にいる良一の目から、康成とリンの姿が少しずつ遠ざかってゆく。 リンの声が聞こえてきた。 「良一さんは元の世界に戻らなければいけない のよ。だって、私のためにハンセン病のワクチ ンを打っ て、ここに来たんでしょ?…

登場人物紹介 ・藤原弘達(一九二一~一九九九) 政治学者で評論家。 テレビなどのマスコミに積極的に登場し、有名 になった。 ・横山やすし(一九四四~一九九六)吉本興業所属の漫才師で、西川きよしとのコン ビで大人気を博していた。自らモーターボートを操縦…

第三幕 第七場:明日への希望 昭和四十七年(一九七二年)四月十六日、川端康 成は永遠の旅人となった。 神奈川県逗子市のマンションの一室で、ガス管 をくわえた遺体が発見されるのだ。 その原因は、今も分からないままである。 しかし、ノーベル文学賞受賞の…

登場人物紹介 ・糸山英太郎(一九四二~)実業家であり政治家でもあるが、投資の世界で 有名になった。良一の姪と結婚して親戚関係になっている。 https://x.gd/fHVmP

第三幕 第六場:それぞれの戦い ある日の昼前、康成はラジオの臨時ニュース で、大変な事件が起きていることを知った。 あの三島由紀夫が、楯の会のメンバー四名と共 に自衛隊市ヶ谷駐屯地に侵入、益田兼利総監を 拘束して、憲法改正のために自衛官が決起する…

登場人物紹介 ・田中角栄(一九一八~一九九三)第六十四代内閣総理大臣で、日本列島改造論を もって様々な改革を行ったが、ロッキード事件 で失脚、公判中に死去した。 ・児玉誉士男(一九一一~一九八四)右翼活動家で、長く政財界の黒幕、フィクサー と呼ばれ続…

第三幕 第五場:激動 良一は、全国モーターボート競走会連合会の代 表者となって、全国各地に次々と建設される競 艇場を見て回ったり、政財界の人たちとの交渉 に忙しい日々を送っていた。競艇の人気で金が 潤沢にあると思ったのか、良一を頼って寄附を 求め…

登場人物紹介 ・大森智辯(一九〇九~一九六七)大辨財天女尊を本尊に仰ぐ辨天宗の開祖で、有 名人も含めて多くの信者を集めている。 智辯学園の創始者としても有名。 ・松下幸之助(一八九四~一九八九)松下電器産業(パナソニック)の創業者で、発明 家でも著述家…

第三幕 第四場:競走 浦和競馬場から帰ってきた良一は、あることを思い付く。 そして良一は、北九州の小倉に向かっていた。 日本で初めて競輪のレースを開催した小倉競輪 場を視察しようと考えたのである。 そこは浦和競馬場同様、活気あふれる娯楽場と なっ…

登場人物紹介 ・白洲次郎(一九〇二~一九八五)海外通で、実業家であると同時に、吉田茂の側 近として憲法改正に関わったり、初代の貿易庁 長官になったりと、第二次世界大戦後に活躍し た。 https://x.gd/fHVmP

第三幕 第三場:従順ならざる日本人 巣鴨プリズンを出た良一は、戦前からの知人に 加えて、獄中で共に過ごした新しい知人なども 含め、 様々な人たちと会って、今後のことを考 える日々が続いていた。 そんな中で、良一とは今まで接点が なかった が、互いに…

登場人物紹介 ・オーブリー・ケンワージー(一八九二~一九六 三)占領軍の憲兵隊司令官で、日本人に対して人道 的に接したことで有名な人物。 ・重光葵(一八八七~一九五七) 外交官を経て政治家となり、第二次世界大戦終 結前後の時期の外務大臣。 https://x.gd…

第三幕 第二場:原点 良一は、A級戦犯容疑者で逮捕はされているも のの、実際に戦争で戦ったり、人を殺したりは していないので、最終的には不起訴もしくは起 訴されても無罪になると分かっており、逆に途 中で釈放されてしまうことの方を懸念してい た。 と…