第三幕
第三場:従順ならざる日本人
巣鴨プリズンを出た良一は、戦前からの知人に
加えて、獄中で共に過ごした新しい知人なども
含め、 様々な人たちと会って、今後のことを考
える日々が続いていた。
そんな中で、良一とは今まで接点が なかった
が、互いに会いたいと思い合っている人がい
た。
それは、当時何度も総理大臣を務めていた吉田
茂の側近であり、イギリス留学の経験を生かし
た抜群の英語力で終戦連絡中央事務局の参与と
して占領軍側と交渉したり、日本国憲法制定に
も深く関わっていた白洲次郎である。
白洲は、留学時代に西洋列強との国力差を痛感
しており、特に対米戦争には反対の立場を貫い
ていたことや、占領軍との強気な交渉姿勢から
“ 従順ならざる日本人 ” と呼ばれていたことな
ど、良一との共通点も多くあった。