エピローグ:永遠の命
お空の上の世界にいる良一の目から、康成とリンの姿が少しずつ遠ざかってゆく。
リンの声が聞こえてきた。
「良一さんは元の世界に戻らなければいけない
のよ。だって、私のためにハンセン病のワクチ
ンを打っ て、ここに来たんでしょ?」
そこで良一は、自分がここに来る前の記憶を思
い出した。
もし自分が元 の世界に戻らなければ、ワクチン
の人体実験が失敗したことになってしまうの
だ。
それでも良一は、 この世界で三人仲良く話して
いた時間の心地良さが忘れられない。
気が付けば、良一の体が、青年時代の精悍な姿
から、八十八歳の老人の姿に戻りつつある。