第三幕
第二場:原点
良一は、A級戦犯容疑者で逮捕はされているも
のの、実際に戦争で戦ったり、人を殺したりは
していないので、最終的には不起訴もしくは起
訴されても無罪になると分かっており、逆に途
中で釈放されてしまうことの方を懸念してい
た。
ところが、思わぬところから覚えのない嫌疑を
掛けられてしまうことになる。かつて良一が二
十機の飛行機と共に盾津飛行場を陸軍に寄附し
た際、叙勲を断ったという美談があるが、実は
後日になって軍の機密費から十万円という多額
の裏金を受け取っていて、それを良一個人が着服したと証言する者が、同じ収監者の中から出
てきたのである。