床の間に飾るような繊細で美しい日本画を、
個人が小さな空間で楽しんでいた昭和初期。
沢山の人が広い会場で芸術と触れ合うことが
できる「展覧会」の意義を訴えた画家がいた。
それが、私の最も好きな川端龍子だ。
彼は“会場で人々の心をつかむ力のある画”を
目指し、巨大な画面いっぱいに躍動感溢れる
エネルギッシュな日本画を描き続けた。
独学で日本画を習得した川端は、才能を開花
させ頭角をあらわし、あの横山大観に「一にも
川端、二にも龍子とそれは『偏愛』といふ言
葉がふさわしい」と言われるほどだった。
しかし、龍子の激しい色使いと筆致、時に
大胆過ぎる手法は、「粗暴で鑑賞に耐えない」
と画壇の中で厳しい批判にさらされることも
多かった。
もともと日本画は、寺社や茶室などに飾られる
軸、屏風、襖絵などの装飾絵画として発達して
きた。
当時も、個人が小さな空間で絵を鑑賞する
“床の間芸術”が主流で、繊細で優美な画風が
好まれた。
でも、従来の日本画の枠にとらわれず自由で
豪放な作品を放つ川端は、次第に日本画壇の
“異端者”となっていく。
都内にひっそり佇む専門美術館は、
私が展示替えがあるたびに必ず出向く神社の
ような存在だ。
是非、一度お足をお運びくださいませ。
http://www.ota-bunka.or.jp/ryushi/