第二幕
第二場:飛躍の時
豊川村会議員という、良一にとっては退屈な仕
事の任期が満了した頃、空への憧れを叶えてく
れた大恩人である、今は亡き西出清の法事に参
加した良一は、参列者の一人であった総合商社
の重役から声を掛けられた。
「笹川さん、議員の職から解放されたそうです
ね。それなら西出飛行士の遺志を継いで、もう
一度空に飛び立たれては如何ですか?」
その頃には、良一が空への憧れを諦める原因と
なっていた右肩の負傷も癒えていたので、心の
中に昔の感情が蘇ってきた。
重役の話は、輸入手続き中に受入先の会社が倒
産して、行き場を失っている飛行機が十機あ
り、良一に引き取ってもらえないかというもの
であった。
「飛行機を十機も買えるんですか!」
「もし引き取っていただけるのであれば、私た
ちは陸軍にコネがありますから、飛行場とか保
管庫とかの手配も全部いたします」