第二幕
第三場:正義
良一は本気で飛行場も飛行機も陸軍に寄附する
つもりであるらしい。
もちろん陸軍は大喜びである。
寄附後に飛行場を使用する予定の第四師団長の
寺内寿一中将は、ちょうど大阪近辺で飛行場用
地を探していたところだったので、直々に良一
の事務所に御礼に訪れて言う。
「笹川さん、ご寄附の件、本当に感謝しており
ます」
「いえいえ、お国のお役に少しでも立てるんで
したら本望ですわ」
「ところで笹川さん、陸軍といたしましては、
政府に対して笹川さんへの勲章の授与を申請し
たいと考えているのですが」
そこで良一は、寺内にとっては想定外のことを
言い出す。
「それはあきまへん。わしは勲章目当てに寄附
するような輩やありませんから、もし勲章なん
かくれはるんやったら、寄附はやめにします
わ」
当時は勲章欲しさに寄附をする者が多く、良一は嫌な感じを持っていたのである。