第三幕第七場:明日への希望
昭和四十七年(一九七二年)四月十六日、川端
康成は自ら命を絶ち、享年七十二歳で永遠の旅
人となった。
親友の突然の死去に動揺する良一は、勲一等瑞
宝章、国連平和賞、勲一等旭日大綬章などを受
賞し、社会活動に一層の力を入れるようになっ
たが、ナヒモフ号の財宝引き揚げ事業では、人
生唯一とも言える失敗を犯してしまう。
しかし、良一の「福祉の王国作り」への情熱は
衰えることなく、ハンセン病撲滅のための運動
で世界中の施設を訪れたり、中華人民共和国か
らの医学研修生受け入れ事業を開始したり、人
した映画の企画を進めたりしている。
そんな時、良一は、世界保健機構(WHO)が
ハンセン病を撲滅するための新しいワクチンを
開発しているという情報を得て、伊藤利根太郎
教授に相談し、自らが人間として初めて実際に
接種を受ける検体となりたいと志願することに
した。