「大局観」は将棋などで使われている表現だ
が、「教養」と同じく実態が掴みにくい。
私も駒の動かし方はわかるものの、深い世界ま
では将棋のことを理解できていない。
ただ、わからないなりに羽生名人の書籍を読
み、実社会に照らし合わせながら理解を深めている。
さて、羽生名人は、次の一手をいかに決断して
いるかについて、「直感」「読み」「大局観」
の3つを組み合わせながら考えている。
●「直感」
1つの局面で指せる80手くらいの中から、瞬
時に2〜3の可能性に絞り込むプロセス。
ここが中心ではないか?
これがポイントではないか?
重要なところではないか?
を瞬間的に峻別・選別していく。
また、
「大雑把に、概要として全体図を把握する」
「明らかにマイナスになる手を瞬間的に捨て
る」
「幾何学的に、その局面を形としてどうかとい
う目で見る」
「ピントを合わせるように、どこが一番のポイ
ント、急所なのかを瞬間的に選択する」。
●「読み」
その手が良いか悪いか?
どこで読みを打ち切るか?
の2つの判断が非常に重要だという。
この力をつけるには、
自分で考える経験を積むこと。
自分が選ばなかった選択肢を、可能な限り検証
する。
●「大局観」
全体を見渡す、上空から眺めて全体像がどうな
っているかを捉える視点。
その特徴は、
「直感と同じように、ロジカルな積み重ねの中から育ってくる、わかってくる。
ただし、その因果関係は証明しずらい」
「たくさんのケースに出会い、多くの状況を経
験していくなかで、だんだん培われる」
「自分がやっていなくても、他の人が過去にや
ったケースを、たくさん見ていくことでも磨か
れてる」
「その人の本質的な性格、考え方が非常によく反映される」
そして羽生名人は、直感と大局観の類似点を
1、ある程度経験することが、直感や対局観を
磨く上で重要である
2、感覚的なものであり、なかなか具体的な表
現が難しい
3、微妙なバランス、さじ加減が求められる
ことを挙げている。
最後になるが、
「終わりの局面がこうなってくれたらいいな」
「こうなるのではないか」という仮定をつく
り、そこに辻褄合わせをしていくような形で
大局観を用いている羽生名人は言っている。
さらに、論理的なところでは識別がつかない、
最後の分からない部分、何が正しいのか論理的
には分からない部分については、好き嫌い、自
分のスタイルや棋風に合っているかといった主
観で判断するとも言っている。