さて、家業の社長就任した30歳からは
特に芸術関係の趣味、お誘いを封印する時代に入る・・・
その期間、約13年続く・・・
と言っても、社長になるとお付き合いする相手、ランクもさらに高くなり、
ボクに対する周囲の目も対応も当然変化が起きてくる・・・
そういう中においても芸術を通した数少ないがエピソードが、ボクにはある・・・
1つは、とある大きな会社の会長室にお邪魔した時のお話・・・
歓談の合間に、飾ってあった東郷青児の絵画をボクは、話題にしてみた・・・
すると、その会長はおもむろにこんな話を喋ってくれた。
「笹川さん・・・この絵には、私が経営者として大事な局面で、2度にわたり
助けてもらった思い出がある。
正確に言うと、私に最終的な決断を、冷静に、心穏やかにさせてもらえるような、
心持ちから大切な気づきを与えてもらった・・・
だから、絵を単に絵にしか観えない経営者は、本当にもったいないと思うね・・・」
もう一つが、企業協賛しておられた会長よりコンサートのお誘いを受けて
二人で5分ほど立ち話をした時・・・・
「単純な企業協賛という意味合いのみならず、経営者の端くれとして芸術文化を
応援することで、私自身も今まで感じることがなかった美意識、感性が湧き上がって
くる経験が、度々起こった。
残念ながら、この境地に達したことがない経営者には、説明をしても決して
深い理解が得られることは決してない。
だから、私はそういう先輩経営者と出会い、見習い、この感覚を自分のものと
できたことは、経営者人生の最大の財産ですよ・・・笹川さん」
この2つのエピソードと出会い、ボクはまた芸術との付き合い方、視点などが、
更に階層が上がったような気がしたのであった。