柘製作所が誇るフリーハンドパイプの最高峰。「イケバナ」。年間製作数は約250本。
すべての作品を職人・福田和弘(76歳)の手作
り。木の素性”に合わせて形状や仕上げを考慮し
て作り上げる フル・ハンドメイドモデルのた
め、1つとして同じものはない。
そのため常時在庫品はなく、注文による製作も
行っていない。また、同一形状でも価格はそれ
ぞれ異なる。
福田はデンマーク・巨匠シックステン・イヴ
ァルソンとヨーゲン・ラーセンに師事したのは
1977年。帰国後、福田は独自のパイプ作りに取
り組む。
その年、シカゴの喫煙具店イワンリース社長
夫妻が日本を訪れ、柘製作所に立ち寄った。
福田が最初に作った3本は夫妻に高く評価さ
れ、その場で買い付ける。柘製作所のフリーハ
ンドパイプが、この時はじめて海外にもたらさ
れた。
翌年、評判を聞いたドイツのラウファー社専務
フフナーゲル氏が来日し、販売を打診してき
た。日本文化に造詣の深い氏の提案により、パ
イプは「イケバナ」と名づけられた。
こうして1978年製の♯001を皮切りに、「イケ
バナ」のヨーロッパ輸出がはじまる。
福田は今も日々、素材となるブライヤーの素性
を読みながら、丹念にパイプを削り出す。
玉模様が浮き出たバーズ・アイ、縦に木目が伸
びるストレート・グレイン。
シェイプの美しさや掌へのなじみを確認しなが
ら、木目の美を引き立たせる。ボウルから吸い
口まで完全な手作り。
ある日、柘さんから自分が長年愛用してきたイ
ケバナ2本を私に使ってもらいたいということ
で届いた。
これで手元にあるパイプは、10本近くになる。
さあ、今日はどんな雲を出してみようか?