金龍はオープンした。
最盛期には、赤坂には60以上の料亭が軒を連
ね、中でも金龍は赤坂の街を象徴する店として
知られた。
かつて、「料亭政治」の舞台として数々の政局
を生み出した金龍が店じまいとなった。
先々代の女将と中曽根総理の仲が良く、政治家
も頻繁に利用していた話は、有名である。
最近は、政治家も企業も料亭を接待に使わなく
なっていった。
そういう時代に、縁あって出入りをするように
なったのが、私が45歳だった。
人生初のことだったので、何かとわからぬこと
ばかりだったが、少し自身が大人の仲間入りを
果たした心持ちになったことを思い出す。
出される食べ物もさることながら、やはり着
物を着た芸者、芸事が最も印象深く脳裏に残っ
ている。
その後、自身も日常からキモノを着るようになったり、浅草へ小唄の稽古に通うになるのだから、人生の巡り合わせとは、本当に不思議なモ
ノである。