第二幕
第一場:次のステージへ
関東大震災後の混乱も一段落し、良一は米相場
だけではなく小豆相場や鉱山への投資なども悉
く成功し、さらに巨万の富を蓄えていたし、康
成も東京帝国大学を無事に卒業し、伊豆の湯ヶ
島温泉に滞在して本格的な小説家活動に入るな
ど、落ち着いた暮らしを取り戻していた。
そんなある日、良一のもとに地元である豊川村
の人たちが大勢訪ねてきた。
「良一さん、村会議員になってくださらんか」
良一は、これまで政治には全く興味がなかった
が、新しいもの好きの性格から、二つ返事で引
き受けてしまい、次の選挙で簡単に当選して、
村会議員という新たな職に就くことになった。